マーケティングというと新聞の経済面や株価などでよく見かける言葉ですが、マーケティングの意味を述べよと言われても業界人外には答えにくいものです。

今回はマーケティング初学者が手っ取り早く大枠を理解するのにもってこいのビジネス書『サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学』を書評します。

「マーケティングの全体像を把握したい」というマーケティング学習者だけでなく「衝動買いを直したい」とお悩みの方にも解決の糸口が見つかる一冊です。

『サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学』概要

本書は6章で構成されており、図解を用いているため読書嫌いの人でも安心して読める内容になっています。

作品名サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学
著者阿部誠
ジャンルビジネス教養
出版社サイト新星出版社

マーケティングと行動経済学について

マーケティングの意味は大雑把に言えば市場のニーズをつかみ需要のある人に需要のあるサービスをアピールし、最終的に購入してもらう一連の流れを言います。

  • サービスAが欲しいからサービスAを選ぶ
  • ダイエットを成功させたいから余計なものを食べない
  • 〇〇という資格を得れば給与が上がるから勉強する

上記の例のように人が合理的に選択をすればそのまま売上が見込まれる…というのが既存の経済学であり、合理的に行動する者を「ホモ・エコノミカス」と言います。

しかし人間は全員が全員合理的に動くわけではありません。

とことん感情優先で動く人もいればこっちの分野では感情優先でも別の分野では合理的に動く人だっています。

タイトルにもある「行動経済学」とは、実際人間が行動するパターンを元にいくつかパターン化してビジネスに役立てる比較的新しい分野です。

既存の経済学に心理学を組み合わせたものを考える人もいるようです。

行動経済学における重要な理論一覧

世の中のサービスは9割くらい行動経済学を利用して衝動買いを誘導していると思った方がいいです。

特に衝動買いを直したい人に注意するべきパターンを第2、3、5章で紹介されていたのでまとめてみました。

第2章 ヒューリスティック

「ヒューリスティック」とは決断の一つで、 ヒューリスティックの対義語が熟考を表す「システマティック」です。

人は情報過多な場合「過去の経験を元にする」「有名人が言っているから〜と思考を停止」などと自分の好みを元に決断することが多いです。

ハロー効果、プラシーボ効果、サンクコスト効果など有名な単語はこのヒューリスティックの決断に含まれます。

このほかにも表現方法を少し変えるだけでイメージアップします。

たとえばタウリン1g配合と言われるよりもタウリン1000mg配合と言われた方が効果ありそうと勘違いしそうになります。

しかし熟考する気がないと、同じ事を言っている数字のトリックに騙される可能性があります。

以上のように売り場では購入者が正常な決断だけをしないよう創意工夫をしています。

衝動買いをしないようにするにはバイヤー側の手口もしっかり理解しておきましょう。

第3章 プロスペクト理論

比較的新しい理論であり、不確実な状況において人がどのように意思決定を下すのかを説明しています

価値関数

人間は損得を選択する時に、期待値が同じでも得する方を選びやすいと説いています。

ちなみに期待値とはある選択を行った結果得られる値を平均化したもの。

くじで例えると以下の通り。

確実に1万円もらえる
50%の確率で2万円もらえる

期待値は同じでも前者を選ぶ人が多いということです。

リスク回避的/リスク志向的

得をする場合はリスクを回避し、損をする場合はリスクを取りやすくなる傾向を示します。

リスク回避の例は価値関数の例と似ているため割愛。

リスク志向の例はギャンブル。

負け続きの時「この数字が出れば逆転のチャンス!」と煽られ通常より多くのbetをかけることがあります。

この手の一発逆転のチャンスはリスキーな条件になりやすいですね。

例えばネット界隈に蔓延る「〇〇をすれば月収100万は余裕」というもの。実際達成している人もいるので嘘ではないのでしょうが、その分リスクを負うことが予想されます。

参照点/コントラスト効果

サラリーマンにおいて仮に臨時ボーナスを得られた場合。分け隔てなく8万だったとするとどうでしょうか。

人によって喜ぶもしくは落胆するなど結果はさまざま。

なぜ違いが出るのかというと、想像していた期待値通りではないからです。

想像していた地点のことを参照点といいます。

コントラスト効果の例をあげると、チラシを見比べた時のこと。

【 同じメーカーの扇風機 】

  • A店のチラシでは5000円
  • 次にB店のチラシでは3800円

最初に高額な数字を見るとその後に見る数字を安く感じるため、立地の問題を無視できるのなら後者を選ぶ方が多いでしょう。

手元にパソコンやスマホがあるのだから、衝動買いを回避するならコントラスト効果を十分発揮したいものですね。

確率加重関数

人は主観的、客観的に状況を判断できる生物ですが、確率の部門ではあまり効果を発揮できません。

低確率で発生する「奇跡」を過大評価し、高確率で発生する「現実」を過小評価しがちです。

たとえばウイルスワクチンを打てばほぼ確実に効果があると言われているのにもかかわらず「ワクチンとの相性が悪くて死んだらどうしよう」と過剰に心配する例です。

命の危機に関わるとより低確率で発生する事象を気にかけるようですね。

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たまとも
私は先月と先々月に職域摂取でモデルナワクチン打ちましたが、2回とも副反応あったので心配する人が出ても仕方ないかなと思います。

前処理/メンタルアカウンティング(心理的勘定)

損得を意思決定する際にまずは分かる範囲で事情整理をすることを前処理と呼びます。

【 PS5を購入検討していた場合 】

  • PS5本体代の入った財布を落とした
  • PS5本体を購入後帰りの電車で置き忘れだ挙句見つからなかった

1度損をしている状態でまた購入しようと思うと、前者の方が購入意欲は増します。

反対に後者はしばらくの間トラウマに陥りがちです。

なぜなら人は無意識のうちに金勘定をしてこれ以上損をしないようにしようと決めるからです。

心の金勘定をメンタルアカウンティングといいます。

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たまとも
私もこの状態ならしばらくショックでショッピングしたくなくなりますね…ネットショッピング最高です。

ハウスマネー効果

苦労して稼いだお金は大事に使い、たまたま手に入った臨時収入にはあまり気を遣わず湯水のごとく使い切ってしまう状況をハウスマネー効果と言います。

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たまとも
安倍政権の時にばらまかれた10万円はさっさと使い切ってしまいましたね。こういうところが衝動買い人の癖なのでしょう…

解釈レベル理論/現在バイアス

人は遠い未来に対しては本質的なことを理解できるのに、目の前にある現実に対しては見た通りのこと以上を理解しにくい性質であることを説いているのが解釈レベル理論と呼びます。

例えばダイエット。

ダイエットを成功させれば確実に未来にいい影響があるのにもかかわらず、目の前においしいお菓子があるともったいないからといって間食してしまう……

明日からダイエット頑張ろうと怠ける行為であり、いつダイエットが終わるのかわかりません。

未来のことよりも今を大事にしているのが分かります。

人は未来よりも現在を重視すると、現在バイアスを引き起こし「選好の逆転」を引き起こす事もあのです。

本件でいうバイアスとは先入観、思考の偏りを示します。

第5章 ナッジ理論

ナッジ理論とは「自分の意志で選択行動するによう促すこと」であり、 行動経済学の分野でよく聞く言葉の一つです。

あくまでも本人が自発的に意思決定をすることを目的としており、ナッジ理論を用いる側が強制するわけではありません。

ステルスマーケティングやDRMに利用できそうな理論ですね。

デフォルト

選んでほしい側をデフォルトに設定しておくことで選択の余地をなくす効果があります。

人は情報過多になると簡単で馴染みのある方を選択しやすいので(ヒューリスティック) 、デフォルトを使えば購入ページへの誘導がしやすそうです。

例えばWEBサービスに新規登録時、個人情報に関する文言のチェック欄にチェックを入れないと先に進みません。

新規登録したい方のうち9割くらいは読む気がありませんので、あらかじめチェック欄にチェックを付けた状態にしておけばイライラせずに済みます。

ただしこの場合文言の変更が必要でしょう。(オプトイン/オプトアウト)

【オプトインオプトアウトの例】

  • 個人情報保護条約に同意します。(デフォルトでチェック済)
  • 個人情報保護条約に同意しません。

保有効果

自分が一度でも手にしたものは中々手放しにくいものです。

手に入れたものをなくすというのは「損」であり、損した状態からまた同じものを手にいれるのは「得」と感じやすいのです。

保有効果を利用したサービスにネットオークションがあります。

一度高額入札者になると中々手放しにくいのがオークション。

例えばiPhone製品となるとライバル多数なので入札がヒートアップしがち。そしてライバル過多の中手に入れると感激します。

以上のように保有効果は衝動買い、無駄金の原因になりやすいので注意が必要です。

フレーミング効果

ライターの仕事でも長期契約と短期契約で仕事をこなすスケジュールは変わります。

短期契約なら締め切りが近いこともあり、スケジュールを組みやすいです。

しかし長期契約となると体調悪化などイレギュラー対応も考慮しなければならず、依頼達成の難易度は上がります。

長期契約を確実にこなすには期限を小分けします。

遠い締め切りよりも目の前の締め切りの案件をクリアするのが大事と脳に思わせます(現在バイアス)。

カクテルパーティー効果

関心のあることに注視し、他をおざなりにしがちな人の心理をカクテルパーティー効果と言います。

カクテルパーティー効果を発揮する一例として健康診断があります。

「対象者のあなたへ朗報。この検診を〇〇円で受けられるのは対象者だけ。この時期を逃せば次は数年後です。」

……のように他人事にさせず自分に当てはまるのだと認識させるのです。

同調効果/利他性

同調効果は名の通り、「他の人も選んでいるから」と安心感を与えることで選択してもらうものです。

利他性とは自分が選ぶことで役に立つことを例示してメリットがあるよう認識させます。

未納税の人へ納税を促すパンフレットで有効活用しているそうです。

本書の感想

どの分野でも利益を生み出すことが重要であるため、必然的にマーケティングについて学ぶ方は多いはず。

本書は1ページの中に図やイラストが入っているページばかりなので、マーケティング初学者に向いています

出版社のホームページに行けばサンプル画面が閲覧できますので試しに見てみるといいでしょう。

フィードバック

理論について語っているのは主に第2章(ヒューリスティック)、第3章(プロスペクト理論)、第5章(ナッジ理論)。

他の章では具体例を表していたり、5章で書いていたことが2章でも書いてあったりしているので前後読み返す必要があったのは面倒くさかったです。

ビジネス書というと一気読みできるのが魅力ですから。

読了した方の感想まとめ

『サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学』を読了した方の意見を聞いてみたのでまとめました。

私とは違った観点を持っているためとても参考になります。ご協力ありがとうございました!

「行動経済学」を取り扱った書籍の中でも、入門書として視覚的に(直感的)わかりやすく描かれているまさに「サクっと」読める内容になっているので、実例をもとに短時間で網羅できる点が優れている。

イラストや図説を多用し、買い物など日常のシーンを題材にしながらの理論・効果の説明は腑に落ちることが多く、意識と反応の間に存在する根拠や明確な理由がわかり読むごとに面白みが深まる良書です。

人はなぜ選択するのかという根源的な問いへの探求や理解が深まる、経済学にとどまらない好奇心を駆り立てる内容も良いです。

ランサーズ「ピピくん」さんより
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たまとも
ついつい広告に反応してしまうカラクリを教えてくれますよね。
衝動買いしないように気を付けなくちゃ…

初めの一冊に相応しい 行動経済学という馴染みのない言葉ですが、普段の何気ない行動についてわかりやすく書かれています。

心理学+経済学=行動経済学という図式を使い入門編として相応しい一冊。

身近な例を取り上げている。普段の生活の中で自分が選択しているつもりでも、「実は企業の戦略に誘導されていた」のような実態を知ることができます。

ビジネスをする人にも役立つ内容ですが、消費者として買い物をする場面でもどのような心理によって行動が起きているかを考えるきっかけにもなるので全ての人におすすめです。

ランサーズ「アモザン」さんより
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たまとも
頷くことが多いコメントです。
私たち消費者は自分の意志でなんでも選んでいるように見えて、実は誘導されているんだなと痛感しました。

マーケティング、マネジメントの方法が理に適っており、とても参考になりました。

仕事は営業職なのですが、マーケティングなどは知っているつもりでした。

しかし、本書を読了することにより、人間の非合理的だが本能的な心理をくすぐることにより、販促ができるという事実を知ることができました。

マネジメントに関しても行動心理を上手くついたものでありますので、誰が実践しても再現性のあるのも魅力的です。

ランサーズ「パディントン」さん
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たまとも
営業職の方からのコメントはとても説得力があります。人には理性があるものの、最終的には心が肝心なのですね。

行動経済学を突き詰めると人を自在に操れそうです。

良かった点は、誰でも気軽に行動経済学の概要が把握できることです。

経済学、しかも心理面の入った経済学ともなると難しい印象がありましたが、この書籍は図や絵を豊富に取り入れ、文章も簡単で分かりやすく、比較的誰でも大枠は理解できる内容だと思いました。

人間の本能の部分に関する学問なので、意外と身近で気づかない所で行動経済学の考え方が使われていることが分かるのも為になります。

現代ではどの組織も宣伝などに巧に組み込まれた考え方なので、その裏面を知り不要なセールスに対する免疫となる知識を得られる良著です。

ランサーズ「neuconmsi」さんより
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たまとも
「行動経済学」って人の探られると弱い部分を観察する分野ですよね。
気づかないところで観察されていたと思うとちょっと恥ずかしいです。

まとめ

ほとんどのページになにかしら図表や絵が挿入されているので読書嫌いでも読み切れると思います。

私は衝動買いがひどかったのと、今後の活動にマーケティングの知識は必要だろうと予想して購入しました。

おかげで衝動買いを抑制できそうですし、マーケティングのスキルを身に付けて副業で効果を発揮できそうだと思いました。

「マーケティングって何?」という方やマーケティングについて俯瞰して読みたい人にオススメの書籍です。